ラスベガスで消えた夜 世界へ挑む日本人2016 ワシントンD.Cへの道

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全国大会前夜、大阪国際交流センターにて。
表参道バイリンガルメンバーからのメッセージを渡した時の玲子さんの笑みが印象的でした。
※写真提供/田中 真奈さん(Pioneer TMC)

 

2015年8月13日、ラスベガス。

トーストマスターズインターナショナルセミファイナル終了後、まだ会場はざわついていた。

 

日本人初のセミファイナル入賞となった田村 直樹さんを囲み、3度目の挑戦にして「新たな歴史」が生まれた瞬間。

 

砂漠のど真ん中にあるラスベガスの厳しい暑さと同時に最高の歓喜となり、ものすごい熱気と情熱に包まれていた。

 

時計は夜の10時を回っていた。

 

予選で2位となった田村さんの祝賀会へと足を向けるメンバーの中に、玲子さんの姿はなかった。

 

「あれ?増井さんは?」

 

玲子さんをよく知っている、Iさんが言った。

 

「なんか、具合あまりよくないみたいです。着いたばかりで相当疲れているみたいです」

 

私は言った。

 

「具合が悪い?」

 

「そっとしておいた方がいいと思います。明日はよくなると思いますよ」

 

「ふーん…」

 

こう伝えておけば、誰も玲子さんがいなくても違和感がないと思ったーー
その事だけは今もはっきりと覚えている。
祝賀会が終わり部屋に戻ると、玲子さんは部屋を真っ暗にして横になっていた。

 

枕元には、白紙のノートとペンが置かれていた。

 

「祝賀会でられなくてごめん。疲れちゃった。でも、スピーチの案考えてたんだ」

 

私と玲子さんは、ラスベガスで同室だった。

 

とはいえ、お互いの行動に干渉しない。食事を取るのも別々。

 

気は合うものの、ある程度の距離感をいつもキープしてお互いを尊重している—

 

玲子さんはそんなトーストマスターズの仲間であり、私の最初のメンターでもあった。

 

セミファイナル終了後に姿を消したその夜、玲子さんは泣いていた。

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昨年の国際大会での玲子さんと私。
れいこさんは、歩いているだけで色々な人から声をかけられ、玲子さんも流暢な英語で返していく。
その姿はとても魅力的でスマートで、同じ女性として私は本当に羨ましい限りである。

 

何で泣いていたのかは、よくわからない。
そして、「お腹がすいた」と言った。

 

私は祝賀会で食べてきたけど、あぁ玲子さん、何も食べなかったんだね。

 

インスタントラーメン作ってあげようか?

 

鍋もあるよ。夜遅いけど、ちゃんと食べてから寝なよ。明日もいっぱいワークショップもあるから。

 

東急ハンズで買ってきた携帯鍋は火が通るまでなかなか時間がかかったが、具のないシンプルなラーメンを玲子さんは美味しそうに食べていた。

 

 

思えば今年の4月まで、彼女もコンテストに出ていた。

 

負けたことがよっぽど悔しかったのか、それで何かにショックを受けたのか、なにがあったのか。

 

少なくとも、私から見えていたのは

 

そんな自分に、「玲子さん自身が傷ついている」。

 

「負けて、泣いて、傷つくほどの悔しさ」 って何なんだろう?

 

 

本当に実力のある人のみが抱え込めるひとつの高い壁であり、私にはそんな玲子さんを慰める最適な言葉を見つける事ができなかった。

 

ただー玲子さんも、いつか世界のステージに立つ事を心のどこかで望んでいる。

 

 

そのためには、もっとスピーチができる場所が玲子さんには必要なんじゃないかな?

 

 

その頃の玲子さんは、仕事の都合で長年所属していたクラブに通えなくなり、トーストマスターズからどんどん離れて行っていた。

 

表参道バイリンガルに来ない?いつでもスピーチできるよ。

 

 

会員が20人いくかいかないかの小さなクラブだけど、大きいクラブみたいにスピーチするのに数カ月待たなきゃいけない、なんてこともないし。

 

また一緒に頑張ろうよ、そしてアメリカ大会のステージ目指そうよ。そしたら玲子さんのブログ書くから。

 

わたしは、そう言うのが精いっぱいだった。
部屋中に漂い始めた日本のインスタントラーメンの香りに包まれ、部活後の一息のような平和な時間が流れていった。

1年後、本当に「世界へ挑む」日本人となってしまうとは、当時の私たちは知る由もなかったのだが・・・

 

 

— 次回へ続きます。

 

「世界へ挑む日本人2016 ワシントンDCへの道2」  船上のBlackbird–
時は必ず来る。

 

 

表参道バイリンガルトーストマスターズ 会長
& 増井 玲子さん 応援実行委員会 会長

 

くどう みきこ

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